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SCA の New Brewing Chart に関する調査

昨年の冬、Specialty Coffee Association (SCA) が公開した記事 [1]「Towards a New Brewing Chart 」について、関連の論文を読みました。 こちらの記事では、新しいブリューチャートへの可能性を提案しており、Frost et al. (2020) [2] をはじめとした最新の研究結果を共有しています。 また、World Brewers Cup 2016 のチャンピオンの粕谷哲さんもこちらの研究に注目しており、ホームページ [3] に日本語の記事を書かれていました。

このブログ記事では、SCA の New Brewing Chart に関する調査を行い、関連する論文の内容を紹介します。 目次は以下の通りになっております。

はじめに

ドリップコーヒーは濃度 (TDS: Total Dissolved Solids) や収率 (PE: Percent extraction) の指標によって定量化でき、Lockhart (1957) は、TDS と PE を用いてドリップコーヒーを分類する試みを行いました [4] 。

図1では TDS と PE を元にドリップコーヒーを9種類に分類した Coffee Brewing Control Chart(*1) は今日まで広く使われてきました。具体的には TDS が高いほど強い味わいになり、PE が高いほど Bitter な味わいになることが読み取れます。

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図1 : Coffee Brewing Control Chart (Frost et al., 2020)

しかしながら、図1 ではコーヒーに含まれる豊富な官能的特性 (sensory attributes) は省略されており、TDS と PE に対して正確な味わいが表現できていません。ここで官能的特性は、具体的には Bitterness, Body, Sweetness などといった味わいを意味しています。

Frost et al. (2020) [2] では、次のような問題点が指摘されています。

  1. TDS が 1.15%〜1.35%、PE が 18%〜22% の理想的な領域であれば、どんな数値でも問題ない。
  2. 消費者の理想とする好みと感覚的な説明を混同している (苦味が強いものは理想的ではないにもかかわらず、消費者は苦味の強いコーヒーを好む場合もある)。
  3. 「Develpped/Under-Developed」「Strong/Weak」の表現はコーヒーの味わいを表現するには不明確である。 Coffee Brewing Control Chart は「コーヒーの味を表現するもの」なのか「コーヒーの適切な淹れ方」を示したものなのか、不明瞭である。
  4. 例えば、PEを17.9%から 18.1%へ変化させたときに、急激に表現が変わってしまう(Weak Under-Developed → Weak)が、実際には感覚的な味わいの変化は連続的であるべき。

そこで Frost et al. (2020) [2] では、様々な条件下のドリップコーヒーに対して TDS と PE を測定し、官能評価を行うことで、新たな Brewing Chart の作成に取り組みました。

検証方法

Frost et al. (2020) では、

輸入先 : Royal Coffee (Oakland, CA, USA)

生産地 : Siguatepeque, Comayagua, Honduras

プロセス : Wased

品種 : Arabica

のコーヒー豆に対して、異なる焙煎度 (ライト / ミディアム / ダーク) の豆を用意します。これらのコーヒー豆に対し、ドリップコーヒーが

TDS : 1.00% / 1.25% / 1.50%

PE : 16% / 20% / 24%

となるように、コーヒーマシンで抽出を行います。 なお、焙煎機は Loring S35 commercial scale roaster、コーヒーマシンは G4 Single 1.0 Gal. Coffee Brewer を使用します。

S35 Kestrel - Loring Smart Roast

G4TP1S63A3100 | Wilbur Curtis

参考文献

[1] Specialty Coffee Association (2020). Towards a New Brewing Chart. 25 Digital Magazine, 11. https://sca.coffee/sca-news/25/issue-13/towards-a-new-brewing-chart.

[2] Frost, S. C., Ristenpart, W. D., & Guinard, J. X. (2020). Effects of brew strength, brew yield, and roast on the sensory quality of drip brewed coffee. Journal of Food Science, 85(8), 2530-2543.

[3] 粕谷哲 (2020). 新しいブリューチャートの可能性 (SCAの研究). https://tetsukasuya.com/archives/recently_post/新しいブリューチャートの可能性

[4] Lockhart, E. E. (1957). The soluble solids in beverage coffee as an index to cup quality. Coffee Brewing Institute.